PUEとは? その意味や計算方法を5分でわかりやすく解説!

PUE(読み方はそのまま「ピーユーイー」と読みます)は、Power Usage Effectiveness の略称で、データセンターの電力がどのくらい効率的に使用されているかを表す指標です。米国の The Green Grid(グリーン・グリッド)というデータセンターのエネルギー効率の向上に取り組む業界団体が2007年に PUE を提唱し[1]、その考え方が明確でシンプルなことからデータセンターの電力使用効率の指標として広く普及し、現在では世界標準になっています。そこで今回は、PUE の意味や計算方法、そして PUE の現状や問題点をまとめてみました。

PUE の意味と計算方法

PUEは、データセンター全体の消費電力が、サーバーやネットワーク機器などのIT機器が消費する電力の何倍必要であるかを数値で表し、この数値が小さいほどデータセンターの電力使用効率が良いとされています。

PUE の計算方法は実にシンプルで、次の式で計算できます。

PUE = データセンター全体の消費電力 ÷ IT機器の消費電力

例えば下図のデータセンターの PUE は、30kWh(データセンター全体の消費電力)÷ 15kWh(IT機器の消費電力)= 2 となります。PUE=2 を超えるとIT機器よりも、空調などのIT機器以外の電力が多く消費されていることになります。

PUE=2のデータセンターの図 PUE=2のデータセンターの消費電力の内訳


最も電力使用効率が良い理想のデータセンターは、IT機器以外の電力を必要としない PUE=1 になります。15kWh(データセンター全体の消費電力)÷ 15kWh(IT機器の消費電力)= 1

PUE=1のデータセンターの図 PUE=1のデータセンターの消費電力の内訳


PUE の測定方法などは ISO/IEC 30134-2:2016[3] として国際標準規格になっています。実際にデータセンターの PUE を測定して報告または公表する場合はそちらを参照することをオススメします。

PUE の現状

PUE が提唱された2007年当時のデータセンターの PUE は、2〜3程度と言われていましたが、現在(2022年1月)最も電力使用効率が良いデータセンターでは PUE=1.1 近辺が実現されています。

この分野の技術進歩は著しく、10年ほど前はPUEは2〜3であったが、近年は省電力化が進み、中規模データセンターで1.5〜2程度、大規模なデータセンターでは1.2程度、最新のクラウド用データセンターでは1.1近辺という報告もある

情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)[4] より引用

さらに最近の実証実験では、IT機器を発熱量ごとにゾーニング、外気エネルギーを活用した冷却システム、液浸式(CPUやメモリなどを液体によって冷却する技術)などの活用によって 年間PUE=1.02 の実現可能性も確認されています。[5]


下の円グラフは、2017年後半頃のGoogleのデータセンターのピーク時消費電力のおおよその内訳です。IT機器(CPUs・DRAM・STORAGE・NETWORKING)の消費電力が86%を占め、PUE=1.16 が実現されています。

Googleデータセンターの消費電力の内訳

The Datacenter as a Computer: Designing Warehouse-Scale Machines, Third Edition[6] より引用


10年ほど前は PUE=2以上のデータセンターも多く、IT機器よりも空調などが大きな電力を消費していました。しかし、現在ではそうした無駄な電力もさまざまな技術により削減され、PUE は極限まで小さくなっています。

今後は、IT機器の中でも特に消費電力の大きい CPU や GPU などのプロセッサーの電力消費を減らすための技術や、新しい仕組みづくりが重要になるでしょう。

PUE の問題点

PUE は、データセンターの電力使用効率を数値で表すことができる便利な指標ですが、PUE が小さいデータセンターが、必ずしも消費電力が少ないとは言えないことに注意が必要です。

例えば、先ほどの PUE=2 のデータセンターの「IT機器の消費電力」だけが +15kWh 増えた場合、PUE は 2 から 1.5 に下がりますが、データセンター全体の消費電力は 30kWh から 45kWh と大きくなります。

「IT機器の消費電力」だけが増えた場合のPUEの変化

また、PUE は、サーバーなどのIT機器が実行した処理の量を評価していないため、例えばサーバーの処理能力が低く、なにの処理もできずに無駄な電力を消費している場合でも、PUE は上がることがなく、処理能力が低いサーバーを増やせば増やすほど「IT機器の消費電力」が増えるため、PUE が小さくなり見かけ上のデータセンターの電力使用効率は良くなってしまいます。

そのため、PUE を提唱した The Green Grid は2009年、データセンターの生産性を表す指標として「DCP(Data Center Productivity)」の策定を発表しました。[7] DCP は、「IT機器が実行した処理の量」を「データセンター全体の消費電力」で割ったもので、消費電力あたりの処理の量を表せるとして発表された当時は注目を集めましたが、本番稼働しているサーバーなどのIT機器の「処理の量」を標準化して計測することは非常に難しい[8]ため、PUE のようには普及しませんでした。

おわりに

PUE だけで、そのデータセンターがグリーンITを実践し地球環境に配慮していることは判断できませんが、今なお PUE は「データセンターの電力使用効率を表す指標」として重要な値です。今後は PUE だけでなく、データセンター全体の消費電力の推移や、使用電力の再生可能エネルギー(風力発電や太陽光発電など)の比率の公表が求められるでしょう。

また、一企業や個人の利益だけを優先するような、社会に貢献しない経済活動には、データセンターおよびクラウドサービスの利用に規制をかけるといった、新しい仕組みづくりが必要であると考えます。

参考文献

  1. ^ Victor Avelar, Schneider Electric Dan Azevedo, The Walt Disney Company Alan French, Emerson Network Power. “WP#49 - PUE指標に関する総括”. The Green Grid. 2012-10-02. https://www.thegreengrid.org/ja/resources/library-and-tools/237-WP, (参照 2021-12-10).
  2. ^ ITproグリーンIT取材班. “電源とUPS”. グリーンIT完全理解!. 第1版, 日経BP社, 2008, p.203-205.
  3. ^ ISO/IEC JTC 1/SC 39 Sustainability, IT and data centres. “ISO/IEC 30134-2:2016 - Information technology — Data centres — Key performance indicators — Part 2: Power usage effectiveness (PUE)”. ISO. 2016-04. https://www.iso.org/standard/63451.html, (参照 2021-12-28).
  4. ^ 国立研究開発法人科学技術振興機構 低炭素社会戦略センター. “情報化社会の進展がエネルギー消費に与える影響(Vol.2)”. 国立研究開発法人 科学技術振興機構. 令和3年2月. https://www.jst.go.jp/lcs/pdf/fy2020-pp-03.pdf, (参照 2022-01-10).
  5. ^ 相澤 直樹, 柴田 克彦, 池田 昌弘, 村田 敏夫. “PUE=1.0x(補機動力nearlyゼロ)のデータセンター用冷却システムの開発 ~実験とエネルギーシミュレーションによるPUEの検証~”. J-STAGE. 2019年. https://www.jstage.jst.go.jp/article/shasetaikai/2019.3/0/2019.3_17/_article/-char/ja/, (参照 2022-01-12)
  6. ^ Luiz André Barroso, Urs Hölzle, Parthasarathy Ranganathan. “The Datacenter as a Computer: Designing Warehouse-Scale Machines, Third Edition”. Synthesis Lectures on Computer Architecture. October 2018. https://www.morganclaypool.com/doi/10.2200/S00874ED3V01Y201809CAC046, (参照 2022-01-18).
  7. ^ 大津心, @IT. “データセンターの生産性を表す新指標「DCP」を発表:グリーングリッドが現状を報告”. ITmedia エンタープライズ. 2009年07月08日. https://www.itmedia.co.jp/im/articles/0907/08/news088.html, (参照 2022-02-02).
  8. ^ ルイス・アンドレ・バロッソ, ウルス・ヘルツル. “データセンターのエネルギー効率”. Googleクラウドの核心. 第1版, 日経BP社, 2010, p.68.